——趣味コーヒーのすすめ 第7話
3年間で、100軒以上のコーヒー屋さんを巡った。
丹波篠山市内から始まって、京都、大阪、神戸。 遠くは福岡、名古屋、東京、神奈川まで足を延ばした。
主観で言うと、そのほとんどが美味しかった。
でも「美味しい」と「お店で出す」は、別の話だった。
「酸っぱくないのが好きです」——店頭で気づいた現実
SATORYでコーヒー器具を販売しながら、あることに気づいた。
お客様に「どんなコーヒーが好きですか?」と聞く。 すると、ちゃんとした浅煎りを飲んだことのない方は、全員こう言う。
「酸っぱくないのが好きです」。
全員だ。例外がほとんどない。
日本人にとってコーヒーのイメージは「苦い飲み物」だ。 缶コーヒー、コンビニコーヒー、チェーン店のコーヒー。日常で触れるコーヒーは、ほとんどが深煎り系の苦味ベース。
その常識が根深い。
浅煎りのスペシャリティコーヒーは、フルーティーで華やかで、別次元に美味しい。 でもそれを「酸っぱい」と感じる人がいる。 「これコーヒー?」と首をかしげる人もいる。
どっちも正しい。好みの問題だ。 でも、お店で出すとなると話が変わる。
SATORYはコーヒー専門店じゃない。来るお客様の多くは、コーヒーのプロじゃない。
説明せずに提供して、「美味しい」と言ってもらえるコーヒー。 お客さんのイメージの中にある「コーヒー」と、本当に美味しいコーヒーを繋げる必要がある。
喫茶店型スペシャリティという答え
喫茶店は基本的に、真ん中のグレードの豆を使う。コモディティグレードと呼ばれるものだ。 苦味とコクがしっかりあって、日本人が「コーヒーらしい」と感じる味。
100軒を巡る中で、面白い店に出会った。 喫茶店のような味わいなのに、使っている豆がスペシャリティグレード。
飲んだ瞬間、「これだ」と思った。
コクと苦味がちゃんとある。でもその奥に、酸味がしっかり生きている。 中煎りで、親しみやすくて、でもどこかが違う。
これを僕は**「喫茶店型スペシャリティ」**と呼ぶことにした。
誰が飲んでもちゃんと美味しい。コーヒーの常識を壊さない。 でも飲めば「いつもと違う」がわかる。
コルリコーヒーさん、イクエイターさん、テンプルコーヒーさん
喫茶店型スペシャリティ。このコンセプトに合う焙煎所を、100軒の中から選んだ。
三田市のコルリコーヒーさん。西脇市のイクエイターさん。三宮のテンプルコーヒーさん。
この3軒が、SATORYの自慢のコーヒーを焼いてくれている。 3軒とも、コーヒー屋さん巡りの中で出会った。
飲んで、話を聞いて、「この味をうちのお客様にも飲んでほしい」と思った。 非常に美味しい。それぞれに個性がある。 でも共通しているのは、説明しなくても一口飲めば「あ、美味しい」とわかること。
僕が趣味コーヒーに連れていった方は、たぶん100名を超えている。 その全員に言えることがある。
「こんな美味しいコーヒー飲んだことない!」。 ——僕は素人なので、この味程度は誰でも出せるんですよ。だって豆がいいから。
100軒巡ったのは、この一言のためだったのかもしれない。
まず、一つだけ。 近くのスペシャリティコーヒー専門店で、中煎りのブレンドを一杯飲んでみてほしい。 苦いだけじゃないコーヒーの味を、確かめてみてほしい。
もし「あ、いつもと違う」と感じたら。 それが、あなたにとっての喫茶店型スペシャリティかもしれない。
次回予告 第8話「趣味コーヒーのすすめ——SATORY’s CAFEで一杯どうぞ」 ——KOMOREBI、UTSUROI、YOIN。3つのオリジナルブレンドが揃うまでの話と、趣味コーヒーが生む小さな循環について。
このブログでは、コーヒーの素人がWEBとAIとコーヒー屋さん巡りで独自のメソッドを作り上げた全過程を公開していきます。 「趣味コーヒー」が気になる方は、ぜひ続きも読んでみてください。
趣味コーヒーのすすめ シリーズ一覧
- 第1話:コーヒーが好きでも嫌いでもなかった店主が、沼にハマった日
- 第2話:コーヒーは豆が8割
- 第3話:プロの言うことが全員違う——それがコーヒーの正体だった
- 第4話:バリスタへの敬意と、趣味コーヒーの誕生
- 第5話:沼の入り口はTIMEMOREだった
- 第6話:器具を買っただけで終わらせない
- 第7話:100軒巡って選んだ答え——喫茶店型スペシャリティという発想(本記事)
- 第8話:趣味コーヒーのすすめ——SATORY’s CAFEで一杯どうぞ
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