MENU

「誰にわかってもらえなくてもいいねん」——それが最高の仕事だった|暮らしの自己満足⑤

——暮らしの自己満足 第5話


アウトドアショップに、京都から来られたお客様がいた。

キャンプ用品を見ながら、いろいろと話をした。
こだわりが強い方だった。
道具の選び方、素材へのこだわり、使い方のこだわり。
話していて、わかった。

この方は、妥協しない人だ。

雑談の流れで、言った。
「実は、本業はインテリアなんです」。

少し間があった。

「……インテリア、相談してもいいですか」。


目次

終の居場所を、作りたい

京都市内のマンションの一室。
クロスと床のカーペットを変えたい、というご相談だった。

話を聞いていくうちに、その言葉が出てきた。

「定年が控えています。この部屋を、終の居場所にしたい」。

だから、妥協したくない。
設計士の先生に頼むほどではないけれど、こだわりは本物だ。
その全部を、ちゃんと形にしてほしい。

この仕事の、一番得意な分野だ。
そう思った。


100枚のサンプルと、何時間もの打ち合わせ

サンプルを持って、何度も伺った。

100枚を超えるサンプルを広げた。
何時間にも渡る打ち合わせを、何度も繰り返した。

「とにかく青が好き」とおっしゃっていた。

青と一口に言っても、幅がある。
ネイビー、コバルト、スカイブルー、グレイッシュブルー、ターコイズ。
明るい青、深い青、冷たい青、温かい青。

限られた空間に、5種類の青を取り入れた。

壁には趣味のものを飾るためのマグネットシートを仕込んだ。
どこに何を飾っても、壁を傷つけずに済む。
趣味のものと空間が、一体になるように。


完成後に、伺った

施工が終わった後、お邪魔した。

部屋の中は、趣味のものでかっこよく溢れかえっていた。

マグネットシートの壁には、コレクションが並んでいた。
5種類の青が、空間の中でそれぞれ役割を持って存在していた。
床のカーペットが、全体を落ち着かせていた。

「最高だ」と思った。
この仕事をしていてよかった、と思う瞬間だ。

その方が、言った。

「誰にわかってもらえなくてもいいねん。私が好きな空間になったから」。

この言葉が、全部だ。


暮らしの自己満足とは、これのことだ

インテリアは、誰かに褒めてもらうためにするものじゃない。

もちろん、友達に「オシャレ」と言われたら嬉しい。
でも、それが目的じゃない。

毎朝目が覚めた時に見える天井。
毎晩眠りにつく前に感じる空間。
ふとした瞬間に「ここ、好きだな」と思える場所。

それが、暮らしの自己満足だ。

誰にわかってもらえなくてもいい。
自分が好きな空間で過ごす時間が、人生を豊かにする。

この仕事は、その時間を作ることだと思っている。

あなたが「好き」と言える空間を、一緒に作りたい。


まず、一つだけ。
自分の部屋で、一番長く過ごす場所を思い浮かべてほしい。
その場所が、本当に好きか。

「好き」と言えないなら、何かが足りていないかもしれない。
何が足りないか、わからなくていい。
それを一緒に探すのが、自分の仕事だから。


次回予告
第6話「白無地の家が多い理由を、誰も教えてくれない」
——「プロに任せる」という言葉の中に、知っておくべきトラップがある。


このブログでは、50年続くインテリア専門会社の代表が「好きを引き出すインテリア」の全てを公開していきます。
「暮らしの自己満足」が気になる方は、ぜひ続きも読んでみてください。



暮らしの自己満足 シリーズ一覧

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

SATORY / SATORY's CAFE オーナー。株式会社サロンテリア大林 代表取締役。1980年丹波篠山市生まれ。19歳から人力車で身につけた「聞く力」を軸に、創業50年のインテリア事業、アウトドアショップ、AIを活用したスープカレー開発、15年間で10,000人以上へのキャリア教育を展開。コーヒーは100軒以上の店を巡った「趣味コーヒー」派。

コメント

コメントする

目次