このシリーズの最終話です。
少し違う切り口で書きます。
工務店の積算が3時間から30分になった話(第1話)。
ベテランの知識をAIで形にした話(第2話)。
AIを使わない会社に積み上がる差の話(第3話)。
5年後の予測(第4話)。
ここまで読んでくださった方に、一つだけ聞いてみたいことがあります。
AIを使うようになって、空いた時間に、あなたは何をしたいですか。
この質問を研修の現場でしてみると、最初は「う〜ん」と考え込む方が多い。
「何をしたいか、そんなこと考えたことなかった」という声もあります。
忙しい。毎日がいっぱいいっぱい。やることが山積みで、「何をしたいか」を考える時間がそもそもない。だから今、時間を作ることを考えている——という方が多いと思います。
それは、ごく自然なことだと思います。
ただ、「時間ができたら、次に何をするか」を考えていないまま時間を作っても、その時間がまた別の「やること」で埋まっていくことが多い。
だから、少しだけ考えておいてほしいことがあります。
僕がAIに触れ始めたとき、最初に感じたことは「効率化できる」ではありませんでした。
「これで、もっとお客様の話を聴く時間が増えるかもしれない」でした。
人力車を引いていた19歳の頃から、ずっとそこが好きだった。お客様と話して、何を求めているかを聴いて、それに応える。その循環が楽しかった。
でも経営者になってみると、その「聴く時間」が、毎日の事務作業や書類仕事に削られていく感覚があった。
AIが一部の作業を引き受けてくれることで、その時間が少し戻ってくるかもしれない。
それが、僕がAIを使い続けている、本当の理由です。
「豊かな時間」という言葉を、僕はよく使います。
好きな空間で過ごす時間、好きな仕事をする時間、好きな人と話す時間——それが増えることが、人生を豊かにする、という考え方です。
インテリアの仕事で、お客様の部屋に合う壁紙を一緒に選ぶ時間が好きです。
キャリア教育で、高校生が自分の「やりたいこと」に気づく瞬間が好きです。
コーヒーを淹れて、黙って飲む朝の15分が好きです。
そういう「これがいい」と感じる時間を増やすために、仕事を続けているのだと思っています。
AIは、その「豊かな時間」を増やすための道具として使えるか。
正直、「使える場合もある」というのが、今の答えです。
使い方を間違えると、AIを管理する作業がまた別の「やること」になって、豊かな時間は増えない。「AIを使わなければいけない」というプレッシャーが増えて、むしろしんどくなる。
だから、AIを使うかどうか、何に使うかは、「自分の豊かな時間を取り戻すために本当に役立つか」という軸で考えてほしいと思っています。
全部に使う必要はない。一つだけでいい。
「これをAIに任せると、好きな仕事に少し戻れる」というものを、一つ見つけることが、最初の一歩だと思っています。
地方の小さな会社でも、AIと一緒に「豊かな時間」を取り戻せるのか——というタイトルを付けました。
答えは、「取り戻せる可能性がある」です。
断言ではありません。可能性です。
その可能性は、「どれだけ高度なAIを使うか」ではなく、「自分の会社の、自分の仕事に、どう組み込むか」で決まると思っています。
丹波篠山の小さな会社で、試行錯誤しながらそれを考えてきました。まだ途中です。でも、少しずつ、その形が見えてきている気がしています。
このシリーズを通じて、「AIの話を読んでいたら、なぜか自分の経営の本質みたいなことを考えていた」と感じていただけたなら、それが一番うれしいことです。
技術の話より、「何のために仕事をするか」の話をしたかった。AIはその「何のために」に近づくための道具の一つだと、今の僕は思っています。
あなたの会社に、じわじわと豊かな時間が増えていきますように。
もし「AIで自分の会社の豊かな時間を取り戻したい」と思っていただけたなら、二つの入口があります。
一つは、『AIへのアイが足りない。』(Amazon: B0GX2TNN73)。地方の中小企業経営者向けに、AIの使い方を日常の言葉で書いた本です。「自分の会社で、どこから始めればいいか」を一緒に整理できる内容になっています。
もう一つは、satory-life.com/ai-labo/ からの問い合わせ。「まず話だけ聞きたい」で構いません。あなたの仕事の話を聴かせてください。そこから一緒に考えます。
細見 勇人 / 兵庫県丹波篠山市にて
コメント