丹波篠山・SATORY’s CAFE(二階町17)に関する記事です。店舗情報・メニュー・よくある質問はこちら。
ある会社でヒアリングをしていたとき、社長がこんなことを言いました。
「うちに、なんでも知っている人がいるんです。取引先から問い合わせが来たら、まずその人に聞く。でも、その人がいないと、どうしていいかわからなくなって」
その会社は、地場の繊維産地で織物を作っている会社です。生地の組成や風合い、染めとの相性まで、取引先からの問い合わせは多岐にわたる。「このデザインで、秋向けに少し厚みを出したい。どの糸が合うか」という相談から「前回と同じ仕上がりで追加発注したいが、ロット数が変わった場合は?」という込み入った話まで、幅広い質問が毎日届くそうです。
その問い合わせに的確に答えられるのが、10年以上働いているベテランの担当者。
「あの人が休むと、正直、困るんです」と社長は静かに言いました。「本人も、それをわかっているから休みにくそうで」
地方の中小企業を見ていると、この話は珍しくないことがわかります。
10年、20年の経験の中で積み上がった知識というのは、マニュアルには書けないものが多い。「この取引先には、この言い方で伝えるとわかってもらえる」「この時期のこのオーダーなら、こういう素材の組み合わせを提案するといい」という、経験が体に染み込んだ判断。
それは会社の大事な財産ですが、同時に、その人しか持っていないという弱さもある。
「引き継ぎしようとしたことがあるんですが、どこから書けばいいかわからなくて」と社長は続けました。
その言葉が、妙に引っかかりました。
「どこから書けばいいかわからない」——これも、実はAIが得意なことのひとつです。
ベテランの担当者に「よくある問い合わせのパターンと、そのときの答え方を教えてください」とインタビューする。会話を録音して、後でテキストに起こす。そのテキストをAIに渡して「FAQ形式にまとめて」と頼む。
それだけで、「あの人の頭の中にあったもの」の骨格が、文章として出てくる。完璧ではないけれど、ゼロよりはるかにマシな出発点になる。
その織物の会社でも、試してみました。
ベテランの担当者に1時間ほど話を聞き、よくある問い合わせとその答え方を語ってもらった。その会話をテキストにしてAIに渡したところ、「よくある問い合わせ30問とその回答のたたき台」が30分で出てきた。
「こんなに早く形になるとは思っていなかった」と社長が言いました。
その後、ベテランの担当者が「ここは少し違う」「この部分はもう少し詳しく」と手を加えて、会社の資料として整えていった。完成まで数時間の作業でした。
大切なことを書いておきます。
AIが「ベテランの代わりになる」という話ではありません。その人が持っている経験の深さや、取引先との関係性や、現場で磨いてきた判断力は、AIには出せない。
ただ、「その人の知識を文章にする作業」——これは、AIが引き受けることができる。
知識を持っている人が「書く作業」に使う時間を、AIが肩代わりしてくれる。その人は、もっと本来の仕事——取引先と話すこと、現場の問題を解決すること——に時間を使える。
「引き継ぎができないまま、その人がいなくなってしまったらどうしよう」という不安を、少し小さくできる。
これは、AIを使う理由として、「効率化」とは少し違う話です。
「あの人しか知らない仕事」が会社に残る、ということ。
その人が病気になっても、転職しても、会社を辞めても——会社に積み上がってきた知識は残る。
それは、会社を守ることにつながる話だと思っています。
あなたの会社に、「あの人しかできない仕事」はありますか。
そのことを、一度、ゆっくり考えてみてほしい。
このシリーズの第1話では「積算の時間が短くなった」という話を書きました。第2話では「ベテランの知識を引き継ぐ」という話を書きました。
どちらも「大変だったものが、少し楽になった」という話です。
次の第3話では、少し視点を変えます。AIを使っていない会社に、今どんなことが起きているか——少し外から見てみる話を書こうと思います。
あなたの会社に、じわじわと豊かな時間が増えていきますように。
もし「うちも、属人化の悩みがある。話を聞いてほしい」と思ったなら、まず気軽に話しかけてみてください。satory-life.com/ai-labo/ からどうぞ。話を聞くだけでも、大丈夫です。
細見 勇人 / 兵庫県丹波篠山市にて

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