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ぼたんスープカレー、はじまります。——素人の1年間が店になる日

ぼたんスープカレー、はじまります。——素人の1年間が店になる日

——ぼたんスープカレー開発記 第5話(最終話)


3月20日、グランドオープンの朝。
店内には関家具の椅子が並び、壁一面にはデザイナーの壁紙が広がる。
厨房からはテンパリングしたスパイスの香り。
カウンターにはハンドドリップのコーヒー。

1年前、この場所でスープジャーによそっていた自分を思い出す。
あの頃とは、全部変わった。

これは最終話。
素人の1年間が、3つのメニューになり、1つの店になるまでの話。


目次

3つの「ぼたん」が揃った日

あなたの仕事やお店に、「これがうちだ」と言い切れるラインナップはありますか。

1年かけてバージョン8.5にたどり着いた赤。
気を抜いた瞬間に生まれた白。
カレーマニアの先輩を唸らせた麻辣キーマ。

3つのメニューが揃った時、ようやく感じた。
通ってもらっても飽きさせない。
SATORYでしか食べられない。
そういうラインナップになった。

全てのメニューに共通するのは、ベーススープだ。

バージョン5の時に鶏ガラの味をもっと出したくて、圧力鍋に変えた。
ぐずぐずになるまで炊いた鶏ガラスープで、香味野菜をもう一度圧力鍋にかける。
野菜くずを取り出し、ミキサーにかけ、ベーススープに混ぜる。
栄養価と濃度感が、ここで一段上がる。

仕上げに鰹と昆布の出汁、白だし、醤油、酒、みりん。
和の調味料で味を整える。

このベーススープが、3つのメニュー全ての土台になっている。


ぼたんスープカレー赤——1年戦ってきた集大成

赤は、うちの看板メニューだ。

ミックススパイスと煮詰めたトマト、
ぼたん鍋用の赤味噌を混ぜ込んだ味噌玉を作る。
肉は地元の肉屋さんから仕入れた国産若鶏のもも肉をグリルして使う。
値段、品質、味を考え抜いて決めた。

提供前にテンパリングを行い、味噌玉とスープを合わせる。
繊細な調味料のバランスで完成した一杯。
素揚げにした野菜をたっぷり添えて出す。

野菜を取りたい方。カレーが好きな方。栄養を気にしている方。
とにかく、いろいろな方に食べてほしい。

バージョン1からの全ての試行錯誤が、この一杯に詰まっている。


ぼたんスープカレー白——やさしいのにちゃんとカレー

白は、バージョン7で完成したと思って気を抜いていた時に生まれた。

「シチューのように食べやすく、でも食べたらスープカレーだと思えるものを」。
AIへのワガママから始まった一杯だ。

豆乳と牛乳にベーススープを合わせ、白味噌を溶く。
コリアンダー、ジンジャー、カルダモンの香りを意識したスパイス構成。
味の決め手は白だしと昆布だし。

やさしいのに、ちゃんとカレー。
ポトフのような、シチューのような、でもカレー。

女性にはこちらの方が人気がある。


麻辣ぼたんキーマカレー——基本を知る人が絶対にしないアプローチ

キーマは、バージョン8.5が完成した後に生まれた最新作だ。

スープカレーだけでは満足できない方もいるんじゃないか。
そう考えた時、ラセンのキーマカレーとスープカレーの2本立てを思い出した。
何度か通って食べていた。
素揚げ野菜が添えられたラセンのキーマは、
僕が食べたどのキーマカレーより美味しかった。

やってみたい。

イノシシのミンチでキーマを作ることを考えた時、
イノシシの臭みを抑えるために昔から山椒を使うことを思い出した。
なら、花椒を使ったキーマを作ろう。

合い挽きミンチとイノシシのミンチを混ぜ、
花椒と八角を使い、コチュジャン、甜麺醤で麻婆豆腐そのものを作る。
そこにもっとスパイスを足していく。

できあがったのは、今まで食べたことのないキーマカレーだった。

カレーマニアの先輩に食べてもらった。
「基本を知っているカレー好きは、絶対にこのアプローチしない。
だから新鮮やけど、めっちゃうまい」。

素人だから、基本を知らない。
基本を知らないから、麻婆豆腐からカレーを作るという発想ができる。

経験がないことは、武器にもなる。


グランドオープンが3月20日になった理由

10月からプレ提供を続けていたのに、
なかなかグランドオープンを打ち出せなかった。

スープカレーの味がまだ完成していなかったこともある。
でもそれだけじゃない。

コーヒーのメニューでも悩んでいた。

ハンドドリップの楽しさや美味しさを体験してもらうことは、
SATORYのコンセプトに入っている。
でもカフェインを気にする方もいる。
そもそもコーヒーが好きじゃない方もいる。

牛乳を使ったオレのメニュー。
カフェインレスのコーヒーや紅茶。レモネード。
どなたにでもゆっくりしてもらえるカフェメニュー。
それがまとまったのは、1月になってからだった。

そしてスープカレーの味が完成した。
ワッフルもAIを使って開発中で、オープンには間に合う。

全部揃った。
だから3月20日。


スープカレーを食べに来たら、椅子に出会う店

SATORYの中に、SATORY’s CAFEという場所を作った。

アウトドアショップの時には意識していなかった、
本業であるインテリアとの融合。
これが新しいコンセプトだ。

店内の椅子は全て、関家具のもの。
オシャレなのに手の届く価格で人気のブランドだ。
この機会に代理店を取り、販売を開始した。
展示見本が、そのまま客席になっている。

座ってみて、好きな椅子を選んでほしい。

壁一面には、丹波市在住のデザイナーさんが描いた壁紙を施工した。
好きなデザインを一から印刷して壁紙として作れるサービスも始める。
オシャレな空間は、日常にも取り入れられる。
それを体で感じてもらいたい。

スープカレーを食べに来たら、探していた椅子に出会えた。
コーヒーを飲みに来たら、アウトドアのグッズに出会い、キャンプを始めたくなった。
インテリアの相談に来たついでに、スープカレーを食べてはまった。

その人にしかないストーリーが始まる空間。
それがSATORY’s CAFEだ。


反省ばかりの1年だった

1年を振り返ると、反省ばかりだ。

スープカレーに悩んでいる間に、
外部環境の変化で本業のインテリアの仕事がうまくいかない時期が続いた。
会社としては、本気のピンチだった。
まだ手放しで何とかなったとは言えない。

そんな中で悠長に飲食を始めたから、もちろんすぐに売上は上がらない。
それでも、納得できなければスタートとは言えなかった。
胃が痛む毎日だった。

でも、AIの勉強を続けてきた経験が別の道を開いた。
中小企業の方にAIの使い方を教えたり、業務効率化を進めたりする、
AIコンサルタントの仕事を独自に立ち上げた。
それが今、次のサロンテリア大林を支える事業へと成長しつつある。

結局、AIと共に歩いてきた経験が新しい事業を生み、
新しい事業形態を作っている。


素人だから出来ないは、言い訳だ

田舎の中小企業を取り巻く環境は、これからもっと厳しくなる。
人がいない。リソースが大手にかなわない。

でも、AIを使えば同じクオリティまでは手が届く。
この1年で、それを体で証明してきた。

自分の息子が「事業を手伝いたい」と言ってくれている。
そんな息子が希望を持てる事業にするには、
今までの当たり前ではだめだ。

素人だから出来ない。
そんな言い訳でうちがつぶれたら、
この地域に僕の家族が帰ってくる未来はない。

「素人の四拍子」——聞く→全部やる→食べる→また聞く。
このサイクルは、スープカレーだけじゃなく、
コーヒーでも、インテリアでも、AIコンサルでも使える。

いろいろな「お役立ち」を作る会社であるために、
もっと挑戦を続けていく。


人間は、自分が主人公の物語の中でしか生きられない

最後に、ここまで読んでくれたあなたに伝えたいことがある。

やってみて、失敗しても死にはしない。

人間は、自分が主人公の物語の中でしか生きることができない。
こうすれば幸せになれるなんてセオリーもない。
人生に豊かな時間をどれだけ増やせるか。
それだけが大切だと、僕は思っている。

スープカレーは、その一つの形だ。

スパイスと素揚げ野菜と栄養価の高いスープで、舌も体も喜んでもらう。
スープカレーをきっかけにSATORYに入ったら、
コーヒーの面白さや、インテリアへの興味や、
アウトドア用品の魅力に出会うかもしれない。

その人にしかないストーリーが始まる。
それがその人の人生を豊かにするものになったら。

「人生を豊かにする自己満足を提供する」。
うちの経営理念は、そういう意味だ。

まず、一つだけ。
3月20日、丹波篠山の商店街に来てください。
スープカレーを食べて、コーヒーを飲んで、椅子に座って、
あなただけの「これがいい」を見つけてください。

僕が1年かけてたどり着いた味を、あなたの舌で確かめてほしい。


ぼたんスープカレー開発記——完


SATORY’s CAFE グランドオープン
2025年3月20日(木)
場所:アウトドアショップSATORY内(丹波篠山市)

メニュー:
・ぼたんスープカレー 赤
・ぼたんスープカレー 白
・麻辣ぼたんキーマカレー
・ハンドドリップコーヒー ほか


このブログでは、飲食経験ゼロの僕がAIと一緒にスープカレーを作り上げた全過程を公開してきました。
全5話、読んでくださりありがとうございます。
このブログでは今後も、コーヒー、インテリア、アウトドア、キャリア教育、AI活用など、
僕が「聞いて、やってみて、また聞く」を続けている全てを書いていきます。


ぼたんスープカレー開発記 全話リンク

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この記事を書いた人

SATORY / SATORY's CAFE オーナー。株式会社サロンテリア大林 代表取締役。1980年丹波篠山市生まれ。19歳から人力車で身につけた「聞く力」を軸に、創業50年のインテリア事業、アウトドアショップ、AIを活用したスープカレー開発、15年間で10,000人以上へのキャリア教育を展開。コーヒーは100軒以上の店を巡った「趣味コーヒー」派。

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