——暮らしの自己満足 第2話
「好きな部屋のイメージはありますか?」
お客様にそう聞くと、ほとんどの方が詰まる。
「うーん……明るい感じ、かな?」 「なんか、オシャレな感じで」 「白っぽい、シンプルな感じ?」
悪い答えじゃない。 でも、その言葉だけでは何も作れない。
「好き」はちゃんとある。 ただ、言葉にしたことがないだけだ。
サンプル帳の前で起きること
インテリアの打ち合わせでは、サンプル帳を一緒に見る。
壁紙だけで、数百種類以上ある。 無地、柄物、テクスチャー、木目調、石目調。 めくってもめくっても、終わらない。
その中で、たまに起きる瞬間がある。
お客様の手が、ぴたっと止まる。
「あ、これ——めっちゃかわいい」。
その次に、必ずと言っていいほど続く言葉がある。
「でも派手やから、使えないよね」。
自分で見つけて、自分で消す。 ほぼ毎回だ。
その確率を、知っているか
数えきれないほどのサンプルがある。
その中で「めっちゃかわいい」と思えるものに出会える確率は、実は低い。 好みはそれぞれ違う。ピンとくる一枚は、簡単には見つからない。
それをやっと見つけた。 なのに、自分で諦める。
「派手だから」。 「うちには合わないから」。 「家族に何か言われそうだから」。
もったいない、と思う。 いや、もったいないだけじゃない。
その「めっちゃかわいい」を、流してはいけないと思っている。
やり方は、いくらでもある
「派手で使えない」は、本当か。
面積を絞ればいい。 部屋全体に貼るのではなく、一面だけに使う。 アクセントクロスと呼ばれる手法だ。
周りに同系統のカラーを置いてボカす方法もある。 クッションやラグで色を拾えば、浮いて見えない。
カーテンで繰り返せば、まとまりが出る。 照明を合わせれば、さらに空間が締まる。
取り入れられない「好き」は、ほぼない。 問題は「派手かどうか」じゃなくて、「どう使うか」だけだ。
「でも派手やから」は、諦める理由にならない。
好きを拾って、かっこよくまとめる
この仕事の面白さは、ここにある。
お客様が「使えない」と思っていたものを、かっこよく空間に落とし込む。 完成した時の反応が、この仕事をやめられない理由だ。
「こんな風になるとは思わなかった」。 「なんか、自分の部屋じゃないみたい」。 「友達に見せたい」。
その言葉のために、サンプル帳を一緒にめくっている。
お客様の「好き」は、最初から言葉では出てこない。 サンプルを見ながら、手が止まる瞬間に現れる。 その瞬間を、流さないこと。
好きを引き出して、かっこよくまとめる。それだけが、自分の仕事だ。
まず、一つだけ。 インターネットで「アクセントクロス」と検索してみてほしい。 「こんな使い方があるのか」という事例が、たくさん出てくる。
「派手で使えない」と思っていた色が、空間の中でかっこよく収まっているのを見た時。 「自分の部屋にも、やってみたい」と思えたら。
その感覚が、暮らしの自己満足の入り口だ。
次回予告 第3話「白いクロスも、オシャレなクロスも、同じ価格だと知っていましたか?」 ——SATORYにカフェを作った理由と、誰も教えてくれなかったインテリアの話。
このブログでは、50年続くインテリア専門会社の代表が「好きを引き出すインテリア」の全てを公開していきます。 「暮らしの自己満足」が気になる方は、ぜひ続きも読んでみてください。
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